翼~開け放たれたドア~
…そういえば……

“私はwingが好き”

あんとき、驚いたのと、すげえサラッと言ったのとで気づいてなかったけどあんときも言ってたな。

あ、だからそのあと理事長にすがりついて泣きそうになってたのか…。

“何…?好きって何…っ?”

“分かんない…分かんないよ…!”

悲痛な声音は、俺の胸を締め付けた。

そして、そのあと身体が勝手に動いていたんだ。

雷さんの声も聞こえなかった。

気がつけば、春輝を抱き上げていた。





他の奴らも春輝の言葉に驚いているようだ。

普段驚いても顔にでない直さえも、この時ばかりはわかりやすく目を見開いて凝視している。

「春輝、お前…“好き”がわかったのか?」

「…なんだろ。ぼんやりとしか覚えてないけど…あの人が好きが感じるものだって言ってたから。
そうなんだって思って」

「あの人?」

「……真っ白な翼と純白の髪の天使」

さっき夢にでてきたって言ってたな。

「撫でられるの好きか?」

「ん」

「他になんか好きなのあるか?」

「んー…」

春輝は部屋の天井を見上げ、考え込んでいるようだった。

…よかった。
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