翼~開け放たれたドア~
「むむ、ふがー!!ぐ、むー!」

「し・ず・か・に!」

「…むぅー……」

状況がわかってきたらしい優太が静かになる。

俺がそっと手を離すと、恨みがこもったような視線を向けられた。

「結翔のばかぁー…」

すっかり元気が抜け落ちた声に苦笑するしかなかった。

「わりぃ…。wingが寝てたからさ」

「むぅ…。それはこっちもごめんなさいだけどぉー」

頬を膨らませる優太にもう一度謝ってから、袋に入った氷を受け取ってタオルにくるむ。

ゆっくりとwingの額へとそれを乗せた。

「wing…、大丈夫なの?」

「信が言ってたんだ。大丈夫だろ。
寝かせとけば治るさ。…たぶん」

「言い切れてないじゃん…」

不服そうな優太に、「言い切れないんだからしょうがないだろ」と困った顔をしてみせる。

優太は気まずそうに顔を逸らしやがった。
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