翼~開け放たれたドア~
あの頃、私はなにも知らなかった──




「春輝。おいで?」

「うん!」

まだ、私は5歳くらいだった。

感情だって豊富で、年相応の元気いっぱいな、髪の色と瞳の色が少しだけ他と違うだけの、いたって普通の子供だったと思う。

その日、お母さんに呼ばれて、私たちは家をでた。

お父さんも、一緒だった。

「春輝、お父さんと手を繋ごうか」

差し出されたその手を、私は無邪気に笑って握る。

お母さんもそれに便乗して、笑いながら手を握ってくれた。

大好きな2人に、両手とも握られていることが私は嬉しくてたまらなかったのを、どうして忘れていたのか不思議なくらいに鮮明に思い出せるんだ。

温かなその体温。

揺れる、同じ色をした髪。

細められる、同じ色をした瞳。

そこに、確かな感情があったんだ。

“好き”という形のない、けれども温かさを感じる、確かな感情が。

髪や瞳のことを言われたって、“お母さんたちとお揃いだよ”って微笑んでくれるお母さんとお父さんがいたから、私は気にしてなかった。

むしろそう言われて、誇りにさえ思えていたくらいだった。
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