翼~開け放たれたドア~
俺の声が、いやに部屋に響いた気がする。

龍也は俯いたままで、王覇の奴らも誰も喋らない。

シン…と静まり返った空間。

どのくらいそうしたんだろうな。

沈黙を破ったのは

「…知ってる」

龍也だった。



「俺だって、相澤に最初は掴みかかったっつぅの。だけど…」

胸ぐらを掴み龍也は言ったらしい。

“なんで春輝さんの目を見た!!
お前は春輝さんに何を言おうとした!!?”

そしたら、相澤空夜は静かに言った。

“こいつが、何抱えてるかは知らないけど、助け求めてるように見えたんです。
んで、気になって目を見たら、すんげぇ暗かった。
闇一色の、光がない目だった。
やっぱりとおもった。
だから、それを言おうとしたんです”

それを聞いて、龍也は相澤空夜を離して、思ったことがあるんだと。

だから、俺はこいつを殴らなかったと。

龍也は俯いたまま、自分に言い聞かせるように言った。
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