翼~開け放たれたドア~
「そうねぇ…。
あなたが産まれて、私が病室に戻ったときだったわ。
その日は、春を感じさせるようなすごくいい天気でね。
なんとなく空を見上げたの。
そうしたら、白い鳥が飛んでいくのが見えて……。
すごく……綺麗だったの。
その鳥の翼が、太陽の光に照らされて輝いて見えた。
渡り鳥だったかもしれないし、遠くてわからなかったけれど、その春に新しく生まれた小さな命だったかもしれない……。
だけど、その翼をみたときに、私にそっくりのあなたの髪色を思い出した」

お母さんは、自分の髪を愛でるように撫でてみせた。

じわりと、お母さんの愛が胸に染み込んでいくのと同時に、目頭が熱くなっていく…。

──お母さん。お母さん…。

「春に輝いてみえたあの鳥の翼のように、あなたも自由に輝いていけますように……。
そう願いを込めて、『春輝』と……、そう名づけたのよ」

ねぇ、私…こんなに嬉しいことはないよ。

お母さんはこんなにも…私を愛してくれていた……。

なんで私は気づけなかったんだろう。

──ううん。違う。

気づこうとしなかったんだ。

私なんて…ってずっと考えていたから、気づこうとさえしていなかったんだ……。

今……、すごく愛されてるって実感してる。

こんなにも心が満たされていく…。
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