翼~開け放たれたドア~
沈黙が続くなかで、俺の心臓の音がドクドクと身体中に響いていくのが、妙に居心地悪かった。

海さんが黙ってるのは、暗黙のなかで“なれない”と言っているからなのか、それともどっちとも言えないからなのか、それともそれ以外のなんかなのか。

よくわかんねぇという不安と、何も言われないという不安とで押しつぶされそうになる。

俺は、人に何か言われなきゃ、強くなることもできねぇのか…?

そう、思っていたから

「──お前は、どう思う?」

そう聞かれたとき、頭がよく回んなかった。

海さんの言葉がぐるぐるとうずまき、そしてやっと理解する。

……俺?

それがわかんねぇから聞いてるのに、海さんはなんで俺に聞くんだ?

「俺は…分かんないです…」

「そうじゃねぇ。
わかるとか、わかんねぇとか…そんなんどうでもいいんだよ。俺は」

俺の言葉を真っ向から否定され、頭がうたれて真っ白になったようだった。

海さんは続ける。

「強くなれるかどうかなんて、俺には正直言ってどうでもいいんだよ。
重要なのはその“気持ち”。そうなんじゃねぇのか?」

俺ははっとしてふりかえる。

そこには、ニッと笑う海さんがいて──

「強くなりてぇって思えるだけでも…充分な強さだと俺は思うぜ?」

ふりかえり、目を見開く俺の胸に、トンと人差し指を軽く押しつける。

「大丈夫だ。──お前なら強くなれる」

不敵に笑う海さんは強かった。
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