翼~開け放たれたドア~
その時、身体がフワッとした。

下を見れば足が宙に浮いていて。

「わっ、春輝軽いね」

直に抱き上げられたことを知った。

ストンとバイクに乗せられる。

直もバイクに乗って、エンジンがかかる。

あまり大きな音はしなくて、心地よい振動が身体を揺らした。

肩越しに直が振り向いたから見上げると、クスッと笑われ、

「しっかり掴まっててね」

バイクが走り出した。




流れる景色に目を細めた。

眩しいくらいの太陽に照らされてキラキラと輝いている。

ふと空を見上げれば、綺麗な青が広がっている。

──あぁ…

なんだろう。この気持ち。

感情なんて、あの部屋に置いてきたはずなのにな。

胸が締め付けられるみたいに、苦しい。

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