翼～開け放たれたドア～

“好きなんだろ？”

雷が言った言葉が、なんの脈絡もなく頭の中を駆け巡った。

…雷。分からない。

私、分からないよ。

この感情の名前も。

“好き”ってどんなことかも。

私が、なんでここにいるのかさえ。

なんで、私ここで生きてるんだろう。

私には、生きる意味なんてないんじゃないのかな。

生きたいなんて、私には思えないんだ。

「“生きる”ってなんだろう…」

無意識に呟かれた声は、誰にも届くことがなく、バイクの音に混じって風に溶けて消えた。