遠恋
数回のコールの後、あいつは出た

「もしもし…」

こんな時間だ、寝ていたのだろうか。
少し声がくぐもっている。

「あ、すまん。起こしちゃったか」

「大丈夫ですよー。よっと」

電話の向こうで、恐らく体を起こしたのだろう。
まだ眠たそうな欠伸も聞こえる。

「わざわざ起こしてまで話す事はないから、今日は別に良いよ」

そう言って切ろうとすると

「また何か落ち込む事でもあったんですか?」

あいつの方から話を振ってきた。

「いや、そういうわけじゃ…いや、どうなんだろう…」

「今日は…あ、時間的には昨日か…どんな事があったんですか?」
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