明日、嫁に行きます!
「こんな所で油売ってないで、さっさとお婆さんの所に戻ってあげて下さい。本当に具合が悪そうだったのよ」

 貴方のこと可愛い孫って愛しげに言ってた人なんだから。
 早く戻ってあげて欲しかった。

「お祖母さんは、今日ここへ来た目的が無事達成できたようなので、今ではすっかり元気を取り戻して、会場内をビールを手にかくしゃくと徘徊してましたよ。僕なんて無視です。だから大丈夫。心配してくれてありがとう。是非君にお礼がしたいのですが、この後、」

「ごめんなさいお断りします」

 ぴしゃりとすげなく断る。
 また彼は、虚を突かれたような顔をした。
 大人な雰囲気を漂わせた顔が、まるで少年みたいに見えてしまう。
 純粋な驚きの顔だった。

「……君、僕が誰だか知ってますか?」

 いきなりの話題転換に「は?」となる。

「あのお婆さんのお孫さんでしょ」

 お婆さんがそう言ってたもの。
 それ以外のことなんて、なんで初対面の私が知ってるなんて思うのか。
 自意識過剰な残念男なのか。
 ああ、女の人にモテまくってたから、そう思うのも仕方がないのかもしれないけれど。
 癇に障るったらありゃしない。

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