明日、嫁に行きます!
「くはっ、ははは! ホント、ありえない!」

 廊下と同じく、リビングも朽ち果てていた。
 高級マンションとは思えないほどの見事な荒れっぷり。
 パーティーでもハーレムを築くくらい女性にモテモテなイケメン男なのに、残念すぎるこの生態。
 そろそろ我慢が限界だ。
 笑いすぎて腸《はらわた》がねじ切れてしまいそう。
 この部屋見たら、絶対女達逃げるわ。
 間違いない。幼稚園児の弟よりも酷い有様。
 こんな状況じゃなかったら、私だって尻尾巻いて逃げだしてる。
 また緩みそうになる口元をなんとか引き締めて、そこら中に散乱する洗濯物を拾い集めた。
 もくもくと作業に没頭する私に、鷹城さんは時計を見ながら誘いを掛けてきた。

「寧音さん、一時間後に食事に行きましょ、」

「無理ッ」

 間髪入れずに即答する。

「……なぜ?」

 眉根を寄せて疑問を口にする鷹城さんに、

「この腐界を浄化してやるのよ!」

 私は高らかに宣言した。

「はあ。では、どうしましょうか」

「貴方、なんかコンビニでお弁当でも買ってきて」

「え? コンビニ、ですか? ……僕が?」

 ぽかんとした顔で私を見るものだから、またも吹き出してしまった。
 彼の無表情がことごとく崩れ去るのが楽しくて仕方ない。
 唇をふふっと綻ばせる。
 どうやら鷹城さんはコンビニに行ったことがないらしい。
 金持ち様はコンビニなんて利用しませんか。
 そうですか。初コンビニおめでとう! 
 なんて思ってると、鷹城さんはふて腐れたような顔を向けてきた。
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