明日、嫁に行きます!
「貴方は鷹城家の、僕の妻になるんですから」
にっこりと笑いながら、決定事項のように「妻」という単語を繰り返す男。
やばい、もしかして、私を洗脳する気じゃなかろうか!?
「な・り・ま・せ・ん!」
きっぱりはっきり言い切ってやる。
「いいえ。なりますよ。絶対です」
「な、なんで」
その自信はいったいどこから来るのか。
泰然とした態度で自信満々に断言するものだから、『あ、そうなんだ』と納得しそうで怖い。
チカチカと頭の中で危険信号が点滅し出す。
思わず拳を握り、彼の前に突きだして『やんのかコラ』と、まるで怯えまくる小型犬のような面持ちで威嚇した。
「私がそう決めましたから」
……あんたが世界の法律か。
突っ込んでやりたいのをグッと耐えて、言い返してやる。
「だって、20歳までちゃんと仕事こなしたら、私は晴れて解放なんでしょ」
「ええ。でも、貴女は僕を好きになりますから」
――――必ず。
そう言って、鷹城さんは薄っすらと片笑んだ。
濃艶な眼差しで挑むように射貫かれて、私はうっと言葉に詰まってしまった。
「た、鷹城さんなんて、私の好みじゃないわ」
咄嗟に強がりな言葉が口を吐く。瞬間、鷹城さんは瞠目し、息を呑んだ。
「……ええ。知ってますよ。だから、貴女に好きになってもらうよう手を尽くしています」
淡々と話す鷹城さんの顔に懊悩の色が表れ、傷ついたような亀裂が走った。が、すぐにいつもの超然とした態度に戻る。
一瞬の変化だったけれど、それを目の当たりにした私の胸がずくりと痛んだ。
鷹城さんの自尊心を傷つけてしまったのではないかという後悔の念が、胸をキリキリ締め付ける。
胸に燻《くすぶ》る痛みを誤魔化すように、握った拳を胸に押しあてた。
「す、好きになってもらうって、それはおかしいわ。鷹城さんは、と、徹くんのことが好きなんじゃないの」
「寧音。気色悪いことを言うその唇を、無理やり塞いでさしあげましょうか」
ムッと剣呑な目で見据えられて、私はその場に凍り付いた。
「うぇっ!? ええっ!? 遠慮しときます……」
「そう、残念ですね」
そういって、鷹城さんはクスクス笑う。
恥ずかしさに動揺して、私が虚勢を張ったせいで彼を傷つけたかと不安に苛まれたんだけど、本当は気にも留めていなかったのかも知れない。だって、何でもなかったように、今はもういつもの尊大な態度に戻ってる。
なんだか大人の余裕を感じてしまう。彼との距離を目の当たりにした気がして、寂しい気持ちを覚えたけれど、私は頭を振って否定した。
ほうっと脱力したように、大きな溜息が漏れてしまう。
鷹城さんの一喜一憂に、感情を振り回されてる自分がどうしようもなく子供に思えてくる。
悶々と煩悶する私は放置され、さっさと注文してしまう手際の良さも、なんだか癇に障ってしまう。ホント、子供じみた態度しか取れない自分がイヤになる。