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「そうだ。二人とも協力してくれませんか?」


仁さんがふいに思い立ったようにそう声を上げた。

「協力?」と、私と貴一さんの声がタイミング良くハモる。



「大叔母様の前で、紋次郎氏と千代さんのふりをして欲しいんです!仲睦まじいお二人の姿を見たら大叔母様もきっと喜んでくれるに違いない!!」


力説する仁さんに、私はぽかーんってなった。だって、私と貴一さんにふりだなんて。

それも、夫婦の……。




「僕は構いませんよ」

先に声を上げたのは貴一さんだった。


「えっ、ちょっ、そんなっ」

焦る私に対し、貴一さんはいつものへらっとした顔を向けてこう言った。


「いいんじゃないかな。せっかく今日はシキさんの誕生日なんだから」

にこりと微笑みながら言われてしまえば、私も言い返すことは出来なかった。


「それはそうだけど……」


良いのかな。本当に……。

そう不安に思いながらも、私も仁さんに頷いて返した。





■ □ ■ □



そんなこんなで、今度は紋次郎さんと千代さんのふりをしてお婆ちゃんに再び会うことになった。




「ていうか、仲睦まじい夫婦ってどうしたら良いのかな……?」

「とりあえずチューでもしとく?」

「〜〜っ、ばかっ!!」


なんてやりとりを小声で交わしつつ、仁さんに案内されてシキお婆ちゃんのお部屋の前までやって来た。


「では、お二人方、あとは宜しくお願いします」


そう頭を下げて、仁さんが去って行く。

お部屋の前で残された私と貴一さんも覚悟を決めてお部屋の扉をノックした。


コンコンと2回鳴らすと、「はぁい」と柔らかい声の返事。

貴一さんが扉を開けて、私もその後ろをついて歩いた。



「あら、千代ちゃんに紋次郎さん。いらっしゃい」


お婆ちゃんは温かく迎えてくれた。
私と貴一さんの姿を見てとても嬉しそうに笑っていた……。


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