ヒカリ


「ビール二本追加お願いしまーす」
園長の周りに座っていたベテラン職員が声をあげる。


立ち上がろうとしたゆきを制して、拓海が席を立ち、忙しそうに廊下を歩いていたお店の人に注文を告げた。
席に戻ると、今度は幹子の理想のタイプの話に変わっていた。

拓海はほっと胸を撫で下ろす。


「だいたい、幹子先生は理想が高すぎるの」
さちは偉そうに言う。

「わかってるけど、こればかりはタイプの話しだからね」
幹子はビールを一口飲むと、頬を膨らます。

「人の遺伝子は、自分に足りない物を補おうとするものなの。私は鏡を見ても満たされない。遺伝子が足りないって言ってる部分を求めてるわけ」

「幹子先生の歴代の彼って、じゃあすごいイケメンなんですか?」

「そう」
幹子は頷く。
「でもイケメンだから、すぐに他の女にとられちゃうのよね」

「そうなんですか」
ゆきは言う。

「ちがうちがう」
さちが首を振る
「言ってるだけ。見たことあるけど、顔はほどほどだったよ」

「ちょっと! 言うだけはタダなんだから、今言わなくてもいいじゃない」
幹子は笑いながら言った。

「そういえば、拓海先生のお友達、すごいイケメンですよ」
ゆきが言った。

「そうなの?」
幹子は目を輝かせる。

「まあ、そうですね」

「写真もってる?」

拓海は素直にスマホの写真を見せた。

「ちょっと、何コレ」
さちが驚いて声を出した。

幹子も興奮してスマホを奪うように手に取った。

「モデル?」

「今は違います」

「ねえ、このお友達、夏祭りつれておいでよ」
幹子が言った。

「いや、こないと思いますよ。人見知りだし。こいつが来ると、こいつが主人公になっちゃう」

「そっかあ。残念だなあ。一度見てみたい」
幹子が溜息をつく。

「だよね」
さちも同意した。

「家にこんな人いたら、緊張して生活できないよね」
幹子が肉をほおばりながらそう言った。
「彼女いるの?」

拓海はしばらく考えてから
「いないと思いますよ」
と言った。
「でも四六時中女の子と遊んでます」

「やっぱりね。とんでもなくかわいい子ばっかりだろうなあ」
幹子がふてくされたように言う。

「見てるだけなら、罪にならない。やっぱり見てみたいわあ。」

「だよね」
さちが笑いながら同意した。

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