腹黒王子に囚われて
 
急に大声を上げたあたしに、瑛太は驚いて触れていた手を放した。


無意識のうちに、体がカタカタと震えていて
流したくない涙が、じわじわと浮かび上がっていく。



「あ……ごめん……。

 俺……」


「………」



あたしの反応に、瑛太は本当に申し訳なさそうに謝っていて
そんな瑛太を見て、徐々に湧き上がっていた感情が冷静になっていった。



「………ううん…。

 あたしのほうこそ……ごめん」



べつに、瑛太は間違ってない。

今までのあたしの反応を見たら、この先をしたって平気だって思ったはずだから。


好きでもない男と平気でキスできる女なんて
抱いたってなんとも思わないだろう、と。


あたしだって、そう思ってたのに……
 
< 103 / 257 >

この作品をシェア

pagetop