腹黒王子に囚われて
一人で帰りながら、葵のことを考えた。
もしかしたら葵は、俺が思っている以上に
何か複雑なものを抱えているのかもしれない。
たまに見せる、怖いくらい冷めた感情ももしかしたらそれが原因で……。
もしもそうなら
ちゃんと気持ちを打ち明けて、葵の抱えているものも受け入れよう。
そう、決心した。
「え?帰った?」
「うん……ちょっと、ね」
次の日、いつも通り葵を迎えに行くと、
教室には葵の姿はなくて、いつも一緒にいる小林美咲って子に声をかけた。
だけど彼女は、少し言葉を濁らせながら、葵は帰ったという。
ちらりと葵の席に目をやったけど
確かに鞄はもうなくて、本当に帰った後の様子。
彼女の様子から、もしかして俺と何かあったことを話して、さっさと帰ったのかもしれない。
「そっか。ありがと」
にこりとお礼を言うと、俺もすぐに昇降口へ向かった。
べつに…
今この場で、俺から逃げたとしても
家まで押しかけて気持ちを伝えるだけだ。
そう思っていた。