腹黒王子に囚われて
「なんで来てんだよ……」
「なんでって……そりゃ、お見舞いでしょ」
と言って、買ってきたばかりのスーパーの袋を見せつけた。
中には、おかゆの材料やゼリーなどが入っていて、一応薬も買っておいた。
「べつに…。
いらねぇよ、そんなの」
「は?」
だけど、返ってきた返事は、お礼なんかじゃなく、
あたしを拒絶する言葉。
思わず、喧嘩腰で応えてしまった。
「だから見舞いとか、そんなのいらねぇからっ……
早く帰れよっ……」
瑛太はさらにきつい言葉をあたしに投げつけて、せっかく来てやったというのにこの対応にイラッときた。
「……あ、そう。
来てごめんね。あたしは別に、偽りの彼女だしね」
そうだよ。
別にこんなとこ、来なくたってよかった。
あたしと瑛太は、学校のみんなの前でだけ、温厚な恋人であればいい。
だからそこから一歩出れば、ただの赤の他人で……。
「じゃ。
勝手にして」
あたしは、そのまま体を反転させて歩き出した。