腹黒王子に囚われて
上沢先輩……
出来ることなら、もう二度と聞きたくない名前だった……。
上沢先輩は、あたしたちがまだ1年だったときの、3年の先輩。
上沢拓(カミザワ タク)。
今で言う、瑛太のような存在だったかもしれない。
カッコよくて、スポーツ万能で、頭はそこまでよくなかったけど、でも誰にでも優しくて……。
誰もが憧れるような先輩だった。
あたしも例外ではない一人で、そんな上沢先輩を遠目から美咲たちと一緒に見ているくらいだった。
けど、ひょんなことがきっかけで、上沢先輩と話す機会が出来て、
その距離はあっという間に縮まった。
恋心とか、そんなものはまだ持ってなかった。
だってそんなもの、
持つ前に……
「あ、ごめん……。
やっぱりまだ、引きずってた?」
「べつに。
引きずるも何も、最初からなんとも思ってない」
「……」
あたしの答えを聞いて、美咲も黙った。