ヴァニタス
油絵の具の匂いが、私の鼻をくすぐった。

それがこの部屋の匂いなのか、それとも武藤さんからの匂いなのか。

どちらの匂いなのかわからないけど、それすらも私の心臓をドキドキとますます加速させた。

その匂いと心臓の音に誘われるように、私は目を閉じた。


目を開けると、私は武藤さんの腕の中にいた。

何で私、武藤さんの腕の中にいるんだろう…と思ったのは一瞬だった。

武藤さんに名前を呼ばれて、武藤さんにキスされて、武藤さんに抱きしめられて…。

それらは全て好きな人にされたんだと思うと、思い出したかのように私の心臓がドキドキと鳴り出した。

「――んっ…」

その声に、私は武藤さんの顔に視線を向けた。
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