ヴァニタス
私の腕から離れた武藤さんは両手を広げると、私を抱きしめた。

「――えっ…?」

これは、どう言うことなのですか?

さっきまでは私が武藤さんを抱きしめていたのに、今は武藤さんが私を抱きしめている。

この違いは何なのですか?

武藤さんの腕の中で戸惑っていたら、
「果南ちゃん」

武藤さんが私の名前を呼んだ。

「はい…」

「俺が果南ちゃんに初めて会った時、俺が何を言ったか覚えてる?」

「えっ…?」

武藤さんに初めて会った時に言った武藤さんのセリフ?

何で今それを聞いてきたのだろうと思いながら、私は彼のセリフを思い出していた。

「えっと…“どうせ終わりにする命なら、その命を俺にくれないか?”、ですか?」
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