ヴァニタス
「だけど、俺が病気だと言うことを知った時の果南ちゃんのことを考えると怖かった。

先がない俺とは反対に、果南ちゃんにはまだ先がある。

俺のせいで果南ちゃんの人生を壊す訳にはいかないと思うと、どうすることもできなかった。

本当は果南ちゃんから離れたくない、果南ちゃんと一緒に生きたいと思っていても…」

「――武藤、さん…?」

私を抱きしめている武藤さんの手が震えている。

「もちろん、果南ちゃんが病気のことに関して何も言わないのはわかっていた。

うぬぼれのように聞こえるかも知れないけど、何も言わない代わりに果南ちゃんは俺のそばにいてくれたんでしょう?」

「――ッ…」

武藤さんは、気づいてくれていたんだ…。

私の目から涙がこぼれ落ちた。
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