スイートナイト
「巽くんはあるホテルの一室で静希さんのことを待っています。

今回の事態が解決するまで、あなたと巽くんはしばらくホテルで暮らしていただきます」

雫ちゃんが続けて言った。

「巽に会えるんですか?」

「会えますよ。

と言うか、静希さんと巽くんを会わせるために連れ出したんですから」

巽に…巽に、会えるんだ…。

そのことに私は泣きそうになった。

「もうすぐで巽がいるホテルにつく。

泣くのは会ってからにしろ」

真鶴さんがバックミラー越しで私に言った。

私は返事をする代わりに首を縦に振ってうなずいて答えた。

本当だったら、反対されて責められるのが当たり前だ。

だけど、私と巽の周りには味方がたくさんいた。

その味方に出会えたことに、私は心の底から深く感謝した。
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