スイートナイト
仕方ないよ…。

最初からウソをついていた私が悪いんだから…。

「――名前、から…。

“澤井”は…前の、要は結婚する前の名字なの…。

本当の名前は、水谷静希」

「はあ…?

結婚する前って…じゃあ、俺、人妻を誘ってデートしてたってことじゃねーか」

「ごめんなさい…」

出てきた謝罪の言葉は、呟いているような小さな声だった。

「今きたメールは夫からで…」

巽くんは震えている。

嫌でも彼が怒っていることを知らされた。

「――もう、会わないから…」
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