夜明けのコーヒーには 早すぎる
それに、レズビアンカップルが人工受精で子供を産む時代に、態々(わざわざ)性器結合に拘泥する必要は無い。医療技術の進歩により、同性愛者も子孫繁栄が出来る。ならば、もう否定される謂われはねえ。どんどんカミングアウトするべきだ。それが正しいんだ」
 ユウヤは、良くスイセイに語った。今思えば、スイセイをカミングアウトさせたかったのだろう。
 しかし、スイセイはカミングアウトしなかった。
 ユウヤの考えに賛同しない訳ではないが、それが必ずしも正しいとは思えなかったからだ。
 スイセイは、平和に必要なことは妥協と自己満足だと思っている。
 つまり、自己をしっかり持ちつつ、他人と距離を置くことである。
 具体的に言えば、生きていく上で、日常的に起こりうるアイデンティティー同士の衝突を、妥協し合って回避し、自己満足によって補強するのである。
 理論上は、これで争いは起きない。
 争いが起きるのは、妥協と自己満足が出来ない人間の性というやつだ。
 スイセイは争いが嫌いだった。
 酷く不毛なことの様に思えたし、価値観の違う人間とは、家族であれ誰であれ距離を取れば良いと思っていたのだ。
 それは今も変わっていない。
 ただ、ユウヤの最後の言葉が頭の中を反芻する。
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