夜明けのコーヒーには 早すぎる
夜明けのコーヒーには早すぎる
 目を覚ますと、ぼくは暗闇に包まれていた。そっと眼を閉じ、耳に意識を集中する。
 ―微かだが、静かな寝息が聞こえる。
 「ん」
 もぞもぞと動く気配がする。隣りで寝ているヒロコが、寝返りをうったようだ。
 ぼくはヒロコを起こさないように、ゆっくりと転がってベッドから抜け出すと、手探りで下着とシャツだけ掴んで、寝室から音を立てないようにして出た。出来れば、愛用のジーパンも持ってきたかったのだが、昨夜ヒロコが盛大に放り投げたので、部屋のどこにあるのか判らない。まあ、取り敢えずはジーパンがなくても、羞恥心を抑えられるから良しとしよう。
 ぼくは、手探りで部屋の明かりを点けると、下着をつけてシャツを着た。
 時計に眼をやると、午前三時を指していた。
 まだまだアルコールが残っているせいか、頭が少し痛い。ぼくは目頭を軽く揉むと、嘆息した。喉の渇きを感じ、冷蔵庫のミネラルウォーターを呷る。
 「ふう」
 一息ついた所で、ぼくはインスタントコーヒーを淹れることにした。粉末にお湯を注ぐと、安っぽいが温かい香りが、ぼくの鼻孔をくすぐる。
 (不思議な気分だ。まかさ、ヒロコとこんな関係になってしまうなんて)
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