夜明けのコーヒーには 早すぎる
 ぼくは、コーヒーを一口啜った。喉から胸、そしてお腹が暖かくなり、少しだけ落ち着く。ぼくはコーヒーカップを片手にソファに腰かけると、ゆっくりと眼を閉じた。
      *
 リョウコさんとの一件以来、ヒロコが「ロンド」へ来なくなった。そのリョウコさんはというと、ぼくの仮説が当たっていたようで、夫婦円満だと風の便りに聞いた。
 閑話休題、ヒロコが「ロンド」へ来なくなったとはいえ、ぼくはさして気にしなかった。少し妙だとは思ったものの、何かあれば連絡があるだろうと考えたからだ。
 しかし、ヒロコが来ない日が続くにつれ、ぼくの酒量は減っていった。
 何故だろうか。未だによく解らない。ヒロコが「ロンド」へ来ないことは、今までにもあった。一人で呑むことにも慣れている。ということは、もしかして―もしかして、ぼくも少し変わり始めていたのだろうか。
 そんなおり、ぼくは街中で偶然ユリさんと出会った。ヒロコのことが頭を過る。
 「お久し振りですね」と互いに挨拶を交わし、暫し雑談をする。そして、互いに時間に余裕があるということで、少しお茶することになった。
< 187 / 200 >

この作品をシェア

pagetop