夜明けのコーヒーには 早すぎる
 どうしたものやらと思案するも、ぼくにはどうすることも出来ない。
 その内起きるだろうと、静観を決め込むことにした。
 それから更に数十分が経った。
 ロックさんはまだ起きない。
 閉店までにはまだまだ余裕があるものの、店員さんも複雑な表情をしている。
 ぼくは日本酒をちびちびと呑みながら、ロックさんを見やった。
 耳が隠れるぐらいのショートカットをしていて、今はその髪が眼に被さっている。
 顔はチラリとしか見てないが、美人に分類されると思う。
 鋭角的な美人とでも言えばいいのだろうか、どこか人に近寄り難い雰囲気を抱かせている感じがする。
 いかんいかん。
 ぼくは頭を軽く振った。
 どうも、人を観察する癖がついているようだ。
 全ての人の感覚を知っている訳ではないが、他人に観察されて気持ちが良いという人は少ないだろう。
 自制しなければならないな。
 ぼくは決意を新たにすると、日本酒を呷った。

 それから更に何十分かした頃、隣りで人の動く気配がした。
 ぼくは横眼で隣りを見やる。
 どうやら、ぼくの心配は杞憂に終わった様だ。ロックさんは眼を擦りながら時間を確認し、大きな欠伸を一つして立ち上がった。
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