あたし、猫かぶってます。


 恋人と親友、どっちを取るか。なんて究極の選択を元カレにされたことがある。もちろん恋人だよって笑顔で答えたけれどーー本音はどうなんだろう。


 朔くんとは付き合っている訳じゃないし、結衣とだって私が勝手に親友とか言える立場じゃないのかもしれないけど、

 ーー私は、多分、朔くん優先なんだと思う。



 そんなとき、いつものメンバーで田崎くんの家に行くことになって、結衣に負けないように、かなり私服に気合いを入れた。

 そんなことも知らずに私の私服を見た結衣は目をキラキラさせて可愛いなんて褒めるから、余計に心にポッカリ穴が空いたような気持ちになった。



 「おじゃましまーす。」

 田崎くんの家に着いて、部屋に行く。


 結衣は懐かしむように田崎くんと中学の話をして笑っている。朔くんのことは放置状態。


 朔くんの視線になんか全く気付かないでヘラヘラ笑っている結衣が、羨ましかった。こんなドロドロした気持ちになる私なんか、みんな知らずに笑っている。


 「アイス好きだったよね、結衣ちゃん。」


 「今も好きだよー?」

 田崎くんも、結衣に気を遣っているみたいだし、どうせみんな結衣のことが好きで、結衣は何の悩みも無く中学も、今もみんなに愛されているんだなって、思った。





 田崎くんの卒アルの個人写真に移る結衣は、完璧な微笑みで、私から見てもすごくすごく可愛くてーー

 だからこそ、クラス写真や日常写真で全く笑っていないことに、私は気付かなかったんだ。


 この時の私は、本当にバカだった。あんなことがあった状況で、結衣が平気で笑えるはず、無いのに。



 
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