あたし、猫かぶってます。
「あ、ジュースもう無いかも。」
田崎くんはグレープジュースを片手に思い出したかのようにそう言う。朔くんと結衣と三人で居て見せ付けられるのも虚しいし、私も行こうかな。なんて考えていると、いきなり結衣が立ち上がる。
「あたしも行く!!」
予想外だ。結衣なら絶対に面倒くさがりそうなのに、自分から行きたがるなんて。
不思議に思った私は結衣を見てーーふと、視線が合う。
「頑張って、」
すごく小さい声でそう呟かれて、胸がぎゅっと痛くなった。
結衣は純粋に応援してくれているのに、なんで私はこんなに嫌な子なんだろう。結衣がズルいなんて思っちゃうんだろう。
田崎くんと結衣が出て行った後、扉を見て思わずため息を吐いてしまう。
「…なんか、あった?」
そんな私に、さりげなくそう聞いてくる朔くん。あぁ、やっぱり好きだな、って実感。
「自分が、嫌な女過ぎて失望してたところー」
ヘラヘラと笑って誤魔化してみるけど、余計悲しくなってきた。私ってしょうもない人間だな。
「そんなこと、無くね?」
笑っている私とは対称的に、真剣に私を見てそう言う朔くん。
「結衣、いつも知奈ちゃん知奈ちゃんうるさいし、結衣の話聞いていれば嫌でも斎藤がどれだけいい奴か、伝わるよ。」
優しく朔くんがそう言うから、笑顔で私の話をしているであろう結衣が安易に想像できた。そんな想像にどんどん汚い自分の心が溶かされて、
「斎藤ーーー!?」
気付いたら、涙がポロポロと溢れ出していた。
結衣を大切にしていなかったのは私だ。結衣を分かっていなかったのは私だ。こんなにも、いつも結衣は私のことを大切に思っていてくれたのに。
それが当たり前だと思っていた私は、バカだーー