あたし、猫かぶってます。
早瀬がこんな風に怒ったの、初めて見た。今までの早瀬は、あたしを嫌っていたけど、こうやってみんなの前であれこれ言われたこと無かったし。
「安達、どうした?」
こんな冷めた目で、見られてもいなかった。
早瀬が立ち上がってから、いきなり静かになった教室に、安達のすすり泣く声だけが聞こえる。
女子を泣かせてまでも早瀬の周りからの評価は「憧れ」なんだと思う。
カッコよくて、頭もよくて、嫌な先生に意見してくれて、ちょっとワガママだけどそれなりに愛想いいし。
ちょっとカッコいい感じの男子でさえは早瀬に近付けないけど、今だって目をキラキラさせて見ている。
「なんで安達が泣くの。ずっと泣きたかったのは斎藤じゃね?」
追い討ち。クラスのKYの1人が拍手し出す。つられてみんなが拍手。
「つーわけで、結衣は斎藤をよろしく。次サボるわ。」
そう言って盛り上がった教室のなか、ダルそうに欠伸をして出て行く。自由すぎる早瀬。
「早瀬くん、カッコいい……」
彼の人気は落ちるどころか、また上がったらしい。