あたし、猫かぶってます。


 「麻紘くん、重くない?」


 「大丈夫大丈夫っ」

 買い物したのはいいけど、お菓子もジュースも麻紘くんが持ってくれて、あたしは手ぶら。


 楽だからいいんだけど、内心ちょっと持った方がよくない?なんて思う。周りから見れば彼氏に荷物持ちさせている性格悪い彼女じゃん。

 まあ、実際性格悪いのは否定しないけど。


 「ありがとう。」

 あれこれ考えていると、いきなりお礼を言い始める麻紘くん。あたしがお礼言うべきじゃないの?


 「普通に接してくれて、嬉しかった。」

 ああ、そうだ。麻紘くんってこういう人だった。


 いつも周りを考えていて、自分なんか後回し。優しくて、ちょっと抜けてて、真っ直ぐ。


 「あたしの方が、ありがとう。」

 あたしには無い、あったかさがある。


 「庇ってくれて、守ってくれて、好きになってくれて、ありがとう。」

 2年も前のことなのに、ずっと言えなかった。


 麻紘くんのこと、避けて自分だけ逃げていた。あたし、逃げてばっかじゃん。


 「…知奈ちゃん可愛いよね。」

 真剣だった麻紘くんの顔が赤く染まる。


 「朔に勝てる気しないよ、」

 諦めないけど、と付け足す麻紘くん。


 「結衣ちゃんも頑張りなよ、奏多と。」

 ニヤニヤしてる麻紘くん。


 えっ、いつバレた!?


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