あたし、猫かぶってます。


 「いつから気付いてたの!?」


 「中3の時からかな。」

 誰にもバレていないと思っていた奏多への想いが、まさか麻紘くんにバレていたなんて…


 「そんな分かりやすかった?」


 「いや、最初はもしかして…って思った程度。結衣ちゃん顔に出ないし。」

 じゃあ、なんでバレたんだろう?


 「なにがきっかけで確信したの?」


 「結衣ちゃんのこと、ずっと見ていたのもあるけど、お揃いのブレスレットしていたのが決め手かな。」


 きっとそれは、由真たちに壊されたブレスレット。麻紘くんはあたし本人より先に奏多への恋心を察していたんだ。

 「しかも、奏多にベッタリだったし。」

 確かに、女子からハブにされてからはずっと奏多と一緒に行動していたな。その前からよく話していたけど。


 「てか、麻紘くんも奏多にベッタリだったじゃん!」

 あたしが由真と仲良かった頃は麻紘くんだって奏多とずっと一緒だった。気持ち悪いくらいに。


 「まぁ、奏多と一番仲良しなのは俺だからね。」


 「は?渡さないし!!奏多はあたしの!」

 麻紘くんを睨むとーー意地悪そうに笑っていた。




 “奏多と一番仲良しなのは麻紘じゃなくて、結衣だもん!”


 “いや、結衣じゃなくて俺だから。”


 “…俺はどっちも好きだよ。”

 ーーーまるで、中学の時に戻ったみたいで。


 麻紘くんはあの事件以来、あたしを結衣と呼ばなくなったから、あたしも麻紘と呼ぶのを辞めた。

 それでも、中学の時みたいに麻紘くんと話せて、ちょっとだけ嬉しかった。


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