ここに在らず。
私は、なんだか不気味だと感じた。
異様だった。彼の持つものなのだろうか。その異様な雰囲気に暗闇が濃さを増して伸びてきたようにも感じる。きっとここが初めて来た場所だからとか、夜だからとか、知らない人だからとかそんな要素の他に私はその人から何かを感じた。
でも何故か逃げなければとは思わなくて、でもその場から動けなくて、なんだか妙な感覚だった。それはきっと、私が他の人と極端に関わりが無いからという訳では無いと思う。心臓が、バクバク動いている。
「……」
きっと、今日のこんな時だったからだろう。
私は一人だ。私はこれからも一人だ。戻っても何も無い。でもこのままでも私には何も無い。私にも何か欲しかった。そうしないと、きっとずっとこの現状から抜け出せない……だから、きっとだからだ。
私はその時、一歩を踏み出した。
するとどうだろう。不思議な事に足は自然と動き始める。スタスタと軽い足取りで私は迷いも無くベンチの方へと向かって行く。可笑しい。高鳴る心臓が重い。怖い時以外にも心臓ってドキドキするんだ……え?怖い時以外?今私、どんな気持ち?