ここに在らず。
「……」
目の前のベンチに座る人。その人は足を組んで俯き加減に座っている。その人から3メートル程の距離で私の足は止まった。
その人の顔は見えない。フードで隠された俯いた顔は上から照らされて影になり、この少し離れた距離からは暗闇の中に溶け込んでしまっている。
私はまるで呼ばれるようにここまで吸い寄せられた…いや、呼ばれていたんだとは思わないけれど、私は本当に、自然とここまで、彼の前まで足を進めていた。
彼の前に着いた時、その時私は見つけたと思った。私は人を見つけた。この人を見つけた。きっとこの人だと思った。
「……一人って何ですか?」
尋ねる言葉が、私の口から溢れ出す。
暗闇に溶け込むその人がどんな反応をしたのかは分からない。でも言葉は届いたのだと、私には感じた。
「一人って何ですか?」