ここに在らず。


「明日はナツキが来るし俺も仕事だしで、また少し状況が変わる訳だしな」と、トウマさんは優しくありながらも、なんだか諭すように私に言った。どうやら本当に心配してくれていて、本当に行かない方が良いと思っているらしい。


密かに夕食を食べながら、片付けをしながら考えていたそれ。意を決して私はトウマさんに尋ねてみた訳だった。行こう!明日から行くべきだ!そう思いついた私は、思い切って口に出して…今、トウマさんに反対された。

…正直、そう言われてホッとした自分がいる。本当ならここで食い下がるべきなのだろうけれど、気持ちを決めたものの、学校へはあまり行きたくない自分がいて、行かねばとは思うけれど、反対されたてここで自ら率先して行きます、行かせて下さい!とはまだ言えない自分も居る。やっぱりあの環境は怖かったし、そこに行って自分の体調がどうなるのか、こんな気持ちじゃまだ平気とは言い切れないと思った。

でも…だからと言って、ここでずっと甘えている訳にもいかない。いつかは行かなければならないし、その日を先延ばしにしても意味が無い。だから明日、区切りをつけようと、そう決めたはずだったのに。だから今トウマさんに尋ねてみたのに。行くことは正しい事、絶対にここは行くべきだ。それは分かっているはずなのに。…それなのに…


「…そうですね、では明日もう少し様子を見てみて…考えてみます」


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