ここに在らず。


…そう。普段だったら絶対に断っていただろうその提案。ナツキさんを本当にお世話係として使ってしまうようなものだし、そんなの高校生にもなって可笑しな話だった。でもやっぱり最初の一歩が…元の生活の欠片でもあるそこへの一歩を、踏み出すが怖かった。

明日どうするの?そんな会話からのそれ。明日こそ行くべきだと思う自分と行きたく無いと思う自分。そして、最善の選択をするためにナツキさんが言ったのは、「じゃあ、少し甘えてみる?」だった。


「…私、甘えてみようと思うんです。そんな自分が許せなかったけれど、でもそれでも良いとトウマさんもナツキさんもおっしゃってくれます。それに、ナツキさんが私にとっての甘える事は、自分を許すことだと教えて下さって…なんだか、軽くなったと、そう感じたんです」


そして、「ですから、明日はナツキさんの力をお借りして学校へ行ってみようと思うのですが、よろしいでしょうか?」と、私はトウマさんの顔を真っ直ぐに見据えて尋ねた。


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