ここに在らず。
ここを出られたら彼に会えるのに。こんな事になるのなら、昼間にこそこそと行くんじゃなかった。どうせなら毎日昼も夜も行けばよかった。どうせこうなるのなら、せめて確立が高い事をしておくべきだった。そうしたら、もしかしたらまた会えたかもしれない。
後一度でいいのに。もう一度でいいから会いたかった。話したかった。しっかり彼の姿を目に焼き付けておきたかった。何故思い出せないのだろう。何故忘れてしまったのだろう。あの人は、あの人は現実に居る人。あの人の名前はーー、
「…トウマさん」
ポロリと、涙が零れた。
「トウマ…さん」
彼の名前を呼ぶたびに、涙は瞳から零れ落ちる。
辛い。とても辛かった。
会いたい。
会いたい。
会いたくて仕方ない。
「トウマさん…!」