ここに在らず。

ナツキさんはずっと私の事を考えてくれて、私が私として生きていくための方法を教えてくれて、その道へと導いてくれた。そして、そうなればいいと願ってくれた。…それなのに私は今、それとは別の道へと進もうとしている。

そんなナツキさんを裏切るような行為をこれからしていこうとしている私。そんな事、ナツキさんに言える訳が無かった。私はこれからナツキさんの想いを裏切りますなんて、そんな事を言える訳が無い。

昔の私に戻りたいんです…なんて、そんな事言えるはずない…


…でも、それが今の私の願いで、私はそうならなくてはならなかった。何故なら私は、何よりも一番、トウマさんに見捨てられたくないからだ。

トウマさんの傍に居られなくなる事が…トウマさんの中に私の存在が居なくなる事が…私には何よりも怖い。


「…ふーん、それなら良かった」