ここに在らず。


……ちょうど、ナツキさんから見ると開いた扉の影に隠れていたのだろう。


「ななな、何で居るんで…ってそうか、そりゃあサエが居るんだからトウマさんも居るか‼︎ 」


なんて、目を真ん丸くしてトウマさんと私を交互に行き来し、ナツキさんは答えを導き出した。そうなのだ、それはよく考えれば分かる話。正におっしゃる通り、私が居ればトウマさんも居る、それが当たり前なのだ。あの日話して以来、トウマさんと私は本当にずっと一緒に居るのだから。


「す、すみません、ちょっと時間がアレなんで…」

「あぁ。後でな」

「……はい」


何でも気の回るナツキさんらしからぬミスである。それだけ忙しい…いや、まぁつまり、トウマさんへの鬱憤が溜まっていたと、そういう事なのだろうか。…やっぱりナツキさんは可哀想だ。


うんうん、と心の中で頷き、同情しながらもナツキさんとはそこで別れ、そのままいつも通りにトウマさんの仕事室へと向かった。着くまでに何人かの方々と挨拶をして、部屋ではひと段落着くまで二人で色々とその時のやるべきものからこなしていった。そして落ち着いた頃に「明日は撮影かー」と呟いた私に、「ついて行こうか?」なんて言うトウマさんは、きっと先程の話を根に持っているのだと思う。本当に、不思議なくらいトウマさんとの距離は近づいた。


< 555 / 576 >

この作品をシェア

pagetop