ROMANTICA~ロマンチカ~
氷室涼輔のスピーチは、感動的だった。


特別変わったことをいっているわけじゃない。


それでも声の調子とか、彼の醸し出す雰囲気とか、人の注目を引きつけるのに充分な、並々ならぬ魅力があった。




そう、言葉にものすごい力があった。きっとこういうのをカリスマ性っていうのだろう。



 
「さて、ここでみなさんに紹介しなくてはいけない人がいます。おいで、都季」


 
いきなり涼輔が、下にいたあたしを手招きした。


人々の視線を一心に浴び、カチンコチンになりながら、あたしは壇上に上がった。
 



「彼女は千住都季さん。


ご想像の通り、千住元社長の娘さんです。学生として多忙な身でありながら、今夜こうして応援にかけつけてくれました。

彼女には、現在私の家でアドヴァイザーをしてもらっております」



 
――ア、アドヴァイザー……。 



 
ヒュルルーッ……


木枯らしが、あたしの周りにだけ吹き荒れた。


あたしの頭上にだけ、雷雲が発生し、あたしの上にだけ、どしゃ降りの雨を降らせた。
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