ROMANTICA~ロマンチカ~
どこへも行って欲しくなかった。


ここにいて欲しい、つかまえていたい……


そんな気持ちからか、無意識のうちにあたしは彼の手に触れていた。



 
――何か言わないと……涼輔さんが元気になるようなことを言わないと……。



 
思いばかりが募り、口をついて出てきたのはこの一言。



 
「涼輔さん、あの……あたし、嬉しいです」
 
「は?」


 
あたしこそ、自分に「は?」と言いたかった。



 
「今の話聞いてた?」
 
「えっと、あのぉ……だから、涼輔さんが自分のことをお話してくれたのって、初めてだから……」
 
「ふーん」



 
面白くなさそうだった。むしろ、場が白けているぞ。



 
「あ、あの……涼輔さんのスピーチ、すごく良かったと思います。

これ、お世辞じゃなくって。ママのことにも触れていただいて、ありがとうございました。

あたし、感激しました。


千住ドットコムの皆さんも、みんなそうだったと思います。

泣いてた人もいましたから」
< 149 / 369 >

この作品をシェア

pagetop