ROMANTICA~ロマンチカ~
第五章 破滅に向かって

1.ヤナギヤ探偵事務所

「それじゃ、どうぞよろしくお願い致しますわ。


あたくし、どうしても年内にこのことは決着をつけたいのでござーますのよ。


それじゃ、ごめんあそばせ」


 

筋トレのためだろうか。

まくし立てた奥様は、両手にやたらデッカイ指輪を五個以上はめている。



「ヤナギヤ探偵事務所」出入り口まで、僕が丁重にお送りし、事務所内に戻った時のことだった。
 


「なあ、シュウちゃん」


 
デスクに頬杖をついたままヤナギヤが言った。


 
「日本人のプロ根性っていうのは、一体どこへ行ってしまったんだろう? 

船に乗って、リスボンにでも行っちまったのだろうか……?」
 


――何をいきなり言い出すかと思えば……。
 


僕は、今さっき帰って行った、貴重なお客様が使ったコーヒー・カップを、奥のキッチンにある流し台に片付けながら言った。
 


「そのセリフ、そのまま自分に問いかけてみたら?」
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