ROMANTICA~ロマンチカ~

2.涼輔

――おかしい。
 


氷室涼輔は、眉間にシワを寄せた。
 

コンサート会場に着いたら、都季がいない。


原島に電話で確認した所、とっくに着いているはずだと言う。

 
『カフェあたりにいるだろう。心配するな』

 
不安げな声を出す原島をなだめ、喫茶室に向かった。


 
――「涼輔さん!」


 
今にも彼女の弾んだ声が聞こえてきそうだった。
 
カフェにも、やはり都季はいなかった。
 

ウェイトレスをつかまえ、二十歳くらいの小柄な女の子が来なかったかと尋ね、それに原島から聞いた服装の特徴を話した。
 

「ああ、その子、三十分前に来ましたよ。

だけど、すっとんきょうな声だして、男の人と一緒に出て行きました。

その人のこと、おじさまって呼んでいましたよ」
 
「ありがとう」
 
礼を言って、涼輔はNホールの外に出ると携帯電話を取り出した。
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