ROMANTICA~ロマンチカ~
フフ……と含み笑いをして、
 

「多少、傷をつけておいた方が、狂言誘拐にしたって、リアリティってものがあるしね……。

あなたが、そのすました顔を苦痛で歪めるところ、見たくなった」
 
「サディスト」
 
高城の身体に力が入るのが、筋肉の動きでわかる。

追い詰められた涼輔さんが、歯を食いしばるが、目はしっかりと見開いて、相手の動きを読もうとしていた。
 

――どうしよう、涼輔さんが……。
 

今まで生きてきてあの時ほど、自分を嫌いになったことはなかった。

乱闘の発端はあたしなのに、それなのにあたしはバカみたいにへたり込んでいるだけで、涼輔さんを助けることができない。
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