ROMANTICA~ロマンチカ~

2.貴公子

「!……」



VIP席を埋める特別会員たちの口々から、ため息がもれる。



都内にある体育館。



伝統空手・西九条(にしくじょう)流開設百周年記念大会会場だ。



本大会午後の部の前に、会場ではエキシビション・マッチがくりひろげられていた。



今、畳の上にいるのは、西九条会長と氷室涼輔(ひむろ・りょうすけ)四段。



ある意味、本日のメイン・イベントともいえた。



大幅に臨時増設されたVIP席。



そこに座る人々のため息が行きつく先は、西九条隆英(にしくじょう・りゅうえい)会長その人ではなかった。



彼を相手に大立ち回りをやってのける青年だった。

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