ROMANTICA~ロマンチカ~
――取りあえず、暮らして行くことが先決よ。学校行って、勉強して、明るい薬屋さんになって……、恋愛や結婚について考えるのは、それからよ!
 


ちょっと動揺したものの、すぐに手持ち無沙汰になった。



勉強しなければいけなかったけど、勉強が手につかなかった。


 
今日大学に行ってみたら、ドイツ語の前期試験に落第していた。再試験は二週間後。



フヌケになっていた一ヶ月間のほとんどが夏休みだったことは、せめてもの救いだ。

おかげで学校を休んだのは実質一週間程度ですんだから。


 
「落ちつかないなぁ」


 
あたしはひとりごちた。

 
部屋は二十畳はあると思う。

だだっ広い。



壁の一つは憧れのウォーク・イン・クロゼット。


部屋の真ん中には天蓋(てんがい)付きのお姫様ベッド。



窓際には立派なマホガニーのデスク。



部屋の出入り口近くの一角にはクルミ材のセンターテーブルと二人がけソファ、それに一人がけの椅子二つのセット。

その上、生涯、自分の部屋に置かれることなどないかと思っていた、鏡台まである。
 

豪華過ぎて、落ちつかない。
< 81 / 369 >

この作品をシェア

pagetop