恋人を振り向かせる方法
敦哉さんは、こんな日でも私を抱くのだと、改めて実感した。
全てを知った上で、でもそれを封印して、今夜の敦哉さんはどこまでも優しく抱いてくれる。
ゆうべ、乱暴に私を扱ったのは、きっと海流と会ったと分かっていたからだ。
私が、他の男の人と会うかもしれない、その疑惑を持ちながらも、敦哉さんはゆうべ私に自由を与えてくれたのだと思うと、自分の軽々しい行動に嫌気が差す。
今夜も、敦哉さんは私を抱き終えると、呼吸を整えながら、ベッドの中で抱きしめてくれた。
「愛来を、今度は楽しいパーティーに招待したいと思うんだ」
唐突にそう言われて、目を丸くする。
それまでの話は無かったかの様に、ごく普通に話されたのだから。
「パ、パーティー?」
これは、普通に接していいという事なのだろうか。
敦哉さんの素肌に頬を当て、目だけ動かす。
尋ねた私に、敦哉さんは目で頷いた。
「実は、高弘から貰ってさ」
「高弘さんから?一体、いつの間に?」
「近くを通ったからって、会社に持って来たんだよ。これ、船上パーティー」
船上パーティー!?
その言葉には、あまりいいイメージが無い。
思わず顔をしかめると、敦哉さんが小さく吹き出した。
「そんな顔するなって。今度は、なかなか面白いパーティーなんだよ」
「面白いパーティー?」
敦哉さんの笑顔につられて、私もいつもの調子を取り戻す。
やっぱり、敦哉さんの笑顔を見ると安心する自分がいた。
「ああ。何たって、著名人が集まるパーティーなんだから。有名モデルや、タレントも来るんだよ」
「何、それ!?」
モデルにタレントと言われれば、逆に行く気が失せてくる。
「やっぱり、敦哉さんは御曹司なのね。そんなパーティー、私には無理よ。気が引ける」
そんな華やかな人たちに囲まれたのでは、どれほど自分がみすぼらしく見えるだろう。
すると、敦哉さんは私を抱きしめる腕に力を入れた。
「大丈夫。直接会わない様に出来るから。それに、晴れて跡を継がない事を認めて貰ったら、もうそんな場所に出入りはしないよ」
ということは、そのパーティーへ行くのには意味があるという事か。
また、お父さんたちに会うのだろうか。
もしかすると、高弘さんや奈子さんにも会うのかもしれない。
そう思うと憂鬱だけれど、少しでも敦哉さんの役に立つなら、気乗りしないパーティーでも行こう。
せめてもの罪滅ぼしの為に。
「分かった。行くわ」
そう返事をすると、一回だけ敦哉さんは私の唇を塞いだ。
「ありがとう。愛来は、何も心配しなくていいよ。俺が必ず側にいるから」