「いかないで…」


ふと、すぐ近くに懐かしい気配を感じた。
顔をあげると、眼前にひどく悲しそうな顔をした彼女がいる。

やっと自分の声が届いたのかと彼は嬉しくなった。
冷たくなった手を彼女に向かって伸ばす。
「ゆ、」

「昴」

彼の声を遮って、結海が彼の名前を呼ぶ。

やっと逢えたというのに、結海は首を左右に振り口を開いた。

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