顔色ひとつ変えず淡々と言い張る。

彼の姿を確認すると、水谷はとたんに数歩下がり少し怯えたようになる。

その様子から、彼は想汰が合宿に参加することに異を唱えていたのだろう。


思えば昴はこの二人が一緒にいたり、話したりしたところを見たことがない。

現実主義の想汰と理想主義の水谷では、価値観そのものが違うのだから相容れないのも当然だろう。

そもそも水谷が自分から想汰を避けているのだ。
理由は分からないが。


「じゃ、じゃあそろそろ出航の時間だな!早く乗ろうぜ」

水谷は誤魔化すように早口でそう捲し立てあげ、一番に乗り込もうとする。
それを想汰はフンと鼻を鳴らし、最後尾にならんだ。

 
< 53 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop