Doll

どれくらい歩いたのだろうが

ふと気がついて周りを見渡すと

眩しく光るお店の看板と
派手な格好をした若者たちで賑わっている街に出ていた


「・・・・夜中、だよな今。」


この街は昼も夜も関係ないのかというくらい明るかった。

ぼくの求めていた 光だ。

何かに取り付かれたように、帰り道がわからなくなるほどずいずい前へ進むぼくに 赤いドレスを着たひとりの女性が近づいてきた。

「はぁいお兄さん、あたしと遊ばない??」



・・・・・・この、枯れた声は・・・・どう考えても女じゃないよな。


「結構です」
「あんっ、もう、つれないのねっ」


ひきつるように答えると、女(の格好をした男)はメイクばっちりな頬を膨らませながらプリプリと去っていった。



・・・・さて、どうしようかこれから。



自販機で珈琲を買ってから、もう閉まっている服屋のシャッターの前にしゃがみこんだ。


お金もそんなに、ないしな...。大体何しに来たんだぼくは。


・・・・・・帰ろうか。


その言葉が頭をよぎったが、2秒後にそれは却下された。


目の前を、かなりの美人が通りすぎたのだ。



ピンクの髪
白い腕
薄い唇
長いまつ毛



どうせ何もせず帰るくらいなら ナンパの1つでも失敗してから 帰ろう。

ぼくは金色の髪を手ぐしで軽く整え、彼女を足早に追いかけた。
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